精神医療

自分らしく街で暮らす

 前回、素直さが大事だと書いたが、これは病気からの回復にも当てはまる。素直な人は回復が早い。素直な人は重症化しにくい。治療者側も同じである。素直なセラピストはケアが上手い。ありのままの患者を偏見なくニュートラルに見て関わっていくからだ。そしてその両方の立場を人生において経験・実践している人物がいる。

 ダニエル・フィッシャーさんは米マサチューセッツ州在住(Daniel Fisher、1943年生まれ)。生化学を専攻して博士号を取得したが、25 歳で統合失調症を発症し、3度の入院を経験しながらも医学部に入り、精神科医となった後、92年に当事者団体「ナショナル・エンパワーメントセンター」を設立し、2002-~2003年には連邦政府の「精神保健に関する新自由委員会」の委員を務めた。
 彼はリカバリー・モデルの推進者であるが、「自分らしく街で暮らす」という小冊子で彼自身の人生観を下記のように述べている。そこには目的論的人生観、存在自体の豊かさ(霊的豊かさ)、自己責任感、共存共栄の精神、真の自由、高いセルフ・イメージ、健全な自己愛、ブロックする信念を外しニュートラルに物事を見る、などこのブログでこれまで取り上げてきた「生き方」モデルのエッセンスに重なる要素が見事に表現されている。
フィッシャーさんの人生観
 1. 私はこの世に一人しかいない価値ある存在である。
 2. 人生バラ色、過去にとらわれることはない。
 3. 私の人生の主人公は私。
 4. 自分の回復は自分で進める。
 5. 私は自分らしい人間関係と仕事を持つ。
 6. 私は社会を変えられる。
 7. 私はすべての生き物とつながっている。
 8. 愛すことが出来、そして愛されている。
 9. 私は感じたことや考えたことを表現できる、怖れにも喜びにも意味がある。
10. 生き抜く勇気をもとう。
11. 自分を信じ、他人を信用出来る。
12. 否定的な信念を中立化しよう。
 この12の言葉(一部表現を改変)やその視点や思考からわかるように、病気からの回復(リカバリー)にとって大事なことと、病気でなくとも人生を豊かに生きていくために大事なことは、結局同じことであり、障害を持っていようが持つまいが、自分らしく生きて人生の成功へと進む「生き方」は同じなのである。
 したがって、ただ共にそれに向かって進めば良い。一緒に進めば良い。そしてそれは「どうしたいか?」ではなく「どうすべきか?」でもなく「どう生きるか?」からスタートする必要がある。