精神医療

まず自分を愛する

 自分という存在がユニークで価値があるということを、見失っている人が多いです。素のままの自分がそのままで最高だということがわからないと、あとは何をやってもうまくいかなくなります。これは自意識過剰になりなさいと言っているのではなく、いつも(どんな試練の時も)自然体のままでの自分の存在価値や能力を認め、それを愛しなさい、大切にしなさいという意味です。

 これがわからないとどのようなことが起きるか、医療現場を例に上げて見ていきましょう。

 最近、当院の外来では新規の患者さまが多いです。新規と言ってもそれまでにいろいろな医療機関での治療をうけてきた人も多いです。受診理由にはいろんなパターンがあり「他のいろんな病院で診てもらったが治らないから、もうここが最後と思って来ました」という場合も少なくありません。

 もちろん、本当に質の悪い治療(医学的には正しくても実りのない治療)しか受けてきていない場合も多いです。しかし、多くの場合、そのご自身が「自分を愛せない」「自分の価値がわからない」状態に陥り、そこから抜け出せなくなっている場合が多いです。

 これは自己イメージ(セルフ・イメージ)の問題なのですが、これを多くの精神科医やカウンセラーは表面的に「抑うつ」と捉えて、抗うつ薬を処方したり、心理的負担の軽減のためストレスを避けなさいなどと助言したり、あるいはストレス対処(コーピング)のスキルばかりを教えようとしますが、これらは問題の本質から遠く、結果として的外れなので症状は長期化したりします。

 また、治療する側、援助する側の問題として見れば、以前に、この世の中、スペシャリストは多いけどプロフェッショナルは少ないと書きました(ここでいうスペシャリストとプロフェッショナルの言葉の定義は下記のとおりです)。

スペシャリスト(奴隷的)
・問題点の分析・指摘だけ     
・定型業務        
・机上の知識        
・専門分野のみ      
・古い知識        
・他業種のプロに教えられない 
・技術(スキル)やハウツーしか持っていない  

プロフェッショナル(王様的)
・改善提案できる
・応用業務
・実践的知恵
・周辺知識もある
・最先端の知識
・他業種のプロに教えられる
・技術(スキル)やハウツーの前にマインドの大切さを知っている

 スペシャリストの特徴は、知識だけは凄くあるし問題指摘はいくらでもできるものの、本質的で具体的な問題解決策や改善策が出せません。これは、子供の考え方しか出来ないことと同じであり、奴隷マインドであり、的外れです。
 プロフェッショナルの特徴は実践的であり問題解決能力が高い人です。成熟した大人の考え方が出来ることであり、王様マインドです。そして王様マインドの特徴はセルフ・イメージの高さです。

 医療現場において、医療者・治療者側のセルフ・イメージの問題は、みなさんが思っている以上に重要です。セルフ・イメージが低いことが原因でスペシャリスト止まりになってしまう人も多いのです。

 「自分を愛すること」、これがちゃんと出来てはじめて、長い間苦しんできた病気も治っていきますし、治療や援助をする側においても、これが出来てはじめてプロとして実りのある成果が出せる人になっていきます。

 このように書いてくると、自分だけ愛する人もいてそれも間違いなのですが、ここでわかってほしいのは、周りの人をたとえすべて愛せたとしても、どうしても自分だけは愛せない・・・という人が結構いるということです。まず自分をしっかり愛することから始める必要があるのです。