
心の病いがいつ頃から人間に生じるようになったかは、有史以前について検証しようがなく仮説の域をでない。しかし、すくなくとも文字が誕生したころにはすでにその記述が見られることから、私は次のように考えている。
文字が誕生する以前、おそらく人間が言語を獲得し、人間に自意識(自我意識、自己意識)が出現した頃に同時に(表現型はともかくすくなくともそのリスクが)存在し始めたのではないか?
そう考えるのは、人間には自己意識を明確に持たない類人猿の時代から言語を使い始める時代にかけて、自分という総体を認識し自他の区別をする「自意識」が誕生したと考えるからであり、言語と自意識の誕生は文化や文明の飛躍的な躍進であったと同時に、自らの存在や行為に関する様々な矛盾と混乱を生む素地となって行ったと考えるからである。
意識には覚醒(生物的意識)、アウェアネス(気づき、知覚、運動的意識)、そしてリカーシブつまり再帰的な意識(自意識)の3つの水準があり、自意識は霊長類の中でも人間に高度に発達した意識である。この再帰的な自意識は、自分の容姿や性格、能力に関する自分の考え、自分の能力に関する確信、自分を価値あるものとみなす自尊感情、自分に注意を向けている意識状態など、 また、自分自身が行為の主体であると認識したり、自分は心身ともにまとまりのあるひとりの人間であることや、過去の自分と現在の自分は同じ自分であることを認識したり、自分は他人とは区別される存在であることを認識する意識である。
この自意識はそもそも他の2つの意識(覚醒やアウェアネス)に比べ、高度な機能を持つがゆえに非常に脆弱な(混乱しやすい)性質を持つものと考えており、さらには、精神疾患の多くがこの自意識の不具合(混乱)から生じていると仮定することが出来るのではないかと考えている。
ではなぜ、人類は言語そして自意識を獲得したと同時にこの脆弱性を克服し、高度な文明や文化を発展させえたのか?そして生物学上の種としてこれほどまでの成功と繁栄を収め、さらには個としてそれこそ自意識として幸福で充実した豊かな人生を達成することができるようになったのか?次回からはこのことに話を進めていこうと思う。
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